「相続登記を司法書士に頼むと、結局いくらかかるんだろう」。
ネットで調べると「5万円」と書いてある事務所もあれば「30万円」と書いてある事務所もあって、相場感がつかめない——そんな声をよく聞きます。
司法書士の見積もりが大きく違って見えるのは、報酬・登録免許税・実費が混ざっているためです。3つを分けて見ると、自分のケースで何円になりそうか想像できるようになります。
この記事で分かること。
- 相続登記の総額相場と3つの内訳
- 司法書士報酬の相場と加算事由
- 登録免許税の計算方法と免税措置
- 費用が変動する5つの要因
- 司法書士の選び方のチェックポイント
自分で進める場合との比較は自分でやるか専門家に頼むかの判断、相続登記全体の流れは相続登記とは?2024年義務化後にやるべきことの全体像を参照してください。
結論:司法書士費用の総額相場
相続登記を司法書士に依頼した場合の総額は、おおむね 10万〜20万円程度が一般的な目安です。内訳は次の3つです。
| 内訳 | 相場の目安 |
|---|---|
| 司法書士の報酬 | 5万〜15万円程度 |
| 登録免許税 | 固定資産税評価額 × 0.4%(不動産が複数なら合算) |
| 実費(戸籍・登記事項証明書など) | 1万〜3万円程度 |
総額が変わる主な要因は次の5つ。それぞれを後の章で詳しく見ていきます。
- 不動産の数と評価額
- 相続人の人数
- 遠方の相続人がいるか
- 遺言書の有無
- 戸籍収集を司法書士に依頼するか自分で集めるか
司法書士報酬の相場と内訳
司法書士報酬(手数料)の相場は 5万〜15万円程度です。日本司法書士会連合会の旧報酬規程は廃止されており、現在は各事務所が自由に設定しています。
基本報酬の目安
| 不動産の数 | 報酬の目安 |
|---|---|
| 1〜2件 | 5万〜8万円程度 |
| 3〜5件 | 8万〜12万円程度 |
| 6件以上 | 12万〜18万円程度(事案により幅あり) |
加算事由
次のような事情があると、基本報酬に加算されることがあります。
| 加算事由 | 加算額の目安 |
|---|---|
| 相続人が5人以上 | 1人あたり 5,000〜1万円 |
| 遠方の相続人とのやり取り | 1〜3万円 |
| 遺産分割協議書の作成 | 3万〜5万円 |
| 戸籍の収集代行 | 1万〜3万円 |
| 数次相続(後述)の処理 | 5万〜15万円程度 |
正直なところ、「報酬○万円」と表示されていても、見積もりを取ると加算が積み上がって倍近くになるケースもあります。問い合わせ時に「自分のケースで総額いくらか」を必ず確認するのが基本です。
登録免許税の計算方法
登録免許税は、不動産の名義を変更する際に国に支払う税金です(登録免許税法第9条)。
計算式
登録免許税 = 不動産の固定資産税評価額 × 0.4%
例:
| 不動産 | 固定資産税評価額 | 登録免許税 |
|---|---|---|
| 土地のみ | 1,000万円 | 4万円 |
| 土地+建物 | 土地 1,000万 + 建物 500万 = 1,500万 | 6万円 |
| 不動産複数 | 合算した評価額 × 0.4% | 合算で計算 |
固定資産税評価額は、毎年4〜6月頃に届く「固定資産税課税明細書」または、市区町村役場で取得する「固定資産評価証明書」で確認できます。
免税措置(主に土地が対象)
土地の相続登記には、特定の条件で登録免許税が免除される制度があります(主に土地が対象で、建物は対象外)。
| 免税の対象 | 内容 | 期限 |
|---|---|---|
| 土地の評価額が 100万円以下 | 当該土地の登録免許税が免除 | 令和9年(2027年)3月31日まで |
| 数次相続で被相続人がすでに登記未了の土地 | 一定要件で前の相続分の登録免許税が免除 | 令和9年(2027年)3月31日まで |
これは租税特別措置法第84条の2の3に定められた制度で、地方の評価額が低い土地や、数次相続のケースで適用されると数万円〜数十万円の節税になります。免税措置は対象範囲や期限が変わることがあるため、最新の制度内容は法務局・国税庁の案内で確認するのが安全です。司法書士に依頼する際は、この免税が使えるかを確認してもらうと安心です。
実費(戸籍取得など)
実費は 1万〜3万円程度。主な内訳は次のとおりです。
| 実費の項目 | 金額の目安 |
|---|---|
| 戸籍謄本(被相続人の出生〜死亡) | 1通 450〜750円程度、合計 5,000〜1万円程度 |
| 除籍謄本・改製原戸籍謄本 | 1通 750円程度 |
| 住民票の除票 | 1通 300円程度 |
| 戸籍の附票 | 1通 300円程度 |
| 印鑑証明書(相続人分) | 1通 300円程度 × 人数 |
| 固定資産評価証明書 | 1通 200〜400円程度 |
| 登記事項証明書(取得時) | 窓口・オンラインで異なる(500円前後の目安) |
| 郵送費・交通費 | 数千円程度 |
※ 各証明書の手数料は窓口・オンライン申請・自治体によって変動するため、最新の手数料表で確認してください。
戸籍の集め方は相続登記に必要な戸籍の集め方、必要書類の一覧は相続登記で最初に集める書類一覧で詳しく整理しています。
戸籍を自分で集めると実費のみで済みますが、被相続人の本籍地が何度も変わっている場合は、各本籍地への請求が必要になり、時間がかかります。
費用が変動する5つの要因
総額に影響する5つの要因を整理します。
要因1: 不動産の数と評価額
不動産の数が増えると、登録免許税(評価額×0.4%)も司法書士報酬も上がります。地方の山林・農地を複数持っているケースでは、評価額が低くても件数で報酬が増えます。
要因2: 相続人の人数
相続人が増えるほど、戸籍の取得通数・印鑑証明書の取得通数・遺産分割協議書の押印手続きの手間が増えます。司法書士報酬の加算事由になりやすい要因です。
要因3: 遠方の相続人がいるか
兄弟姉妹が全国に散らばっているケースでは、郵送でのやり取り・遺産分割協議書の郵送往復が発生し、報酬に 1〜3万円程度加算されることがあります。
要因4: 遺言書の有無
遺言書がある場合は、遺産分割協議が不要になり、相続登記がシンプルになります。司法書士報酬が 2〜3万円程度安くなるケースが多くあります。
ただし、自筆証書遺言で家庭裁判所の検認が必要な場合は、別途検認の費用と時間がかかります(遺言書の検認手続き参照)。
要因5: 数次相続の有無
数次相続とは、被相続人が亡くなった後、相続登記をしないうちに相続人の1人がさらに亡くなり、新たな相続が発生したケースを指します(数次相続の注意点参照)。
数次相続では、登記の手順が複雑化し、司法書士報酬が 5万〜15万円程度加算されることがあります。
司法書士の選び方のチェックポイント
司法書士事務所は全国に多数あり、料金体系も対応範囲もまちまちです。選ぶときのチェックポイントを整理します。
ポイント1: 見積もりに「すべての費用」が含まれているか
「報酬5万円から」という表示でも、登録免許税・実費・加算分が別建ての場合があります。問い合わせ時に「自分のケースで総額いくらか」を必ず確認してください。
ポイント2: 相続登記の取扱件数
司法書士は登記全般を扱う専門職ですが、相続登記の取扱件数が多い事務所だと、難しいケース(数次相続・遠方相続人・戸籍が揃わないケース)にも慣れています。事務所のサイトで「相続登記の年間取扱件数」や事例紹介を確認すると判断材料になります。
ポイント3: 郵送・オンライン相談の対応有無
近年は、テレビ会議・電話・郵送による相談で進められる事務所が増えています。本人確認や原本書類の郵送往復は必要ですが、事務所所在地が遠くても遠隔で進められるなら、依頼の選択肢が広がります。
ポイント4: 無料相談の活用
多くの事務所が初回30分〜1時間の無料相談を実施しています。複数事務所で相談して、対応の丁寧さ・見積もりの内訳の説明・難点の整理力を比べると、依頼先の判断がしやすくなります。
自分でやる場合との比較
司法書士に依頼するか自分でやるかの比較は次のとおりです。
| 項目 | 自分で進める | 司法書士に依頼 |
|---|---|---|
| 費用 | 実費 1〜3万円+登録免許税 | 司法書士報酬 5〜15万円+実費+登録免許税 |
| 所要時間 | 2〜4か月程度 | 1〜2か月程度 |
| 手間 | 戸籍収集・書類作成すべて自分で | 委任すれば基本おまかせ |
| 向くケース | 不動産1〜2件、相続人少数、戸籍がシンプル | 不動産複数、相続人多数、遠方、数次相続 |
詳しい比較は自分でやるか専門家に頼むかの判断を参照してください。
費用面で迷う場合は、まず複数の司法書士事務所から見積もりを取り、自分でやる場合との時間と手間を比較してから決めるのも一つの方法です。
よくある質問(FAQ)
司法書士の費用は分割払いできますか?
事務所によって異なります。多くは一括払いですが、分割対応や着手金+成功報酬の二段階払いを受け付ける事務所もあります。事前に問い合わせて確認してください。
司法書士に依頼すると登録免許税は安くなりますか?
登録免許税は法律で計算が決まっているため、依頼先によって変わることはありません。ただし、土地100万円以下の免税措置などを忘れずに適用してもらえるかは、依頼先の知識量で差が出ます。
弁護士と司法書士、どちらに頼むべきですか?
相続登記の手続き自体は司法書士が専門で、報酬も司法書士の方が安い傾向があります。相続人間で争いがある場合や、遺産分割訴訟が見込まれる場合は弁護士が向きます。トラブルがない一般的な相続登記なら、司法書士で十分です。
司法書士費用は相続税の控除対象になりますか?
被相続人の死亡時にすでに発生していた債務ではないため、相続税の債務控除の対象になりません。葬儀費用と異なり、控除に組み込めない点に注意してください。
司法書士に頼んだ場合、戸籍は自分で取り寄せるべきですか?
両方の選択肢があります。自分で集めれば 1〜2万円程度の加算を節約できますが、戸籍の取り寄せに 1〜2か月かかることがあります。仕事や介護で時間が取りにくい場合は、加算してでも代行依頼する方が現実的です。
まとめ
相続登記を司法書士に依頼した場合の総額は、おおむね 10万〜20万円程度が目安です。内訳は次の3つに分かれます。
- 司法書士の報酬: 5万〜15万円程度
- 登録免許税: 固定資産税評価額 × 0.4%
- 実費(戸籍・証明書など): 1万〜3万円程度
費用が変動する主な要因は5つ。
- 不動産の数と評価額
- 相続人の人数
- 遠方の相続人がいるか
- 遺言書の有無
- 数次相続の有無
登録免許税には免税措置(土地100万円以下、令和9年3月31日まで等。対象は主に土地で建物は対象外)があり、適切に適用すると数万円〜数十万円の節税になるケースがあります。最新の制度は法務局・国税庁の案内で確認してください。
司法書士を選ぶときは「見積もりにすべての費用が含まれているか」「相続登記の取扱件数」「郵送・オンライン相談の可否」「無料相談の活用」の4点を確認するのが基本です。
判断に迷う場合は、複数の司法書士事務所から見積もりと対応範囲の説明を受けて比較してから依頼先を決めるのも一つの方法です。
次に読む記事は、状況に応じて選んでください。
- 自分でやるか専門家かの判断 → 自分でやるか専門家に頼むかの判断
- 相続登記の全体像 → 相続登記とは?2024年義務化後にやるべきことの全体像
- 必要書類の一覧 → 相続登記で最初に集める書類一覧
- 期限の整理 → 相続登記はいつまでに何をすればよいか
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法律・税務の個別アドバイスではありません。具体的には司法書士・税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。記載内容は記事公開時点の情報に基づいています。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的には司法書士・税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。
