親が亡くなると、悲しむ間もなく、いろいろな手続きが一気に押し寄せます。

死亡届、年金や保険の手続き、相続人の確認、実家の片付け、不動産の名義変更、お墓のこと。やることが多すぎて、「何から手をつければいいのか分からない」と感じる方は少なくありません。

ただ、全部を同時に進める必要はありません。大事なのは「期限があるもの」から順番に進めることです。

この記事では、親が亡くなったあとに必要なことを4つの段階に分けて整理しました。

  • まず期限がある手続きは何か
  • 実家の片付けや売却はいつ考えるべきか
  • 相続登記はいつまでに必要か
  • 墓じまいはどのタイミングで考えればよいか

全体の流れを先に知っておくだけで、気持ちはかなり楽になります。

まず知っておきたい、4つの段階

親が亡くなったあとの流れは、だいたい次の4つに分けて考えると整理しやすくなります。

  1. 直後の手続き(〜2週間): 死亡届、火葬許可、保険や年金まわり、公共料金の確認など
  2. 相続の手続き(1〜3か月): 相続人の確認、財産と借金の確認、相続放棄をするかの判断など
  3. 実家と不動産の手続き(3〜6か月): 相続登記、片付け、売却や賃貸の検討など
  4. 供養の整理(半年〜1年): お墓を今後どうするか、墓じまいや永代供養を考える時期

実際には前後することもあります。ただ、この4つの段階を頭に入れておくと「今やるべきこと」と「まだ急がなくてよいこと」が分かりやすくなります。

フェーズ1: 直後にやること(〜2週間)

最初の時期は、期限のある手続きを落とさないことが大切です。

最初の7日間でやること

  • 死亡診断書を受け取る(病院で発行。提出前にコピーを5〜6部取っておく)
  • 死亡届を提出する(死亡を知った日から7日以内、届出先は市区町村役場)
  • 火葬許可証を取得する(死亡届と同時に申請)
  • 葬儀・火葬の手配をする

死亡診断書は、保険金の請求や各種手続きで必要になります。役所に提出する前にコピーを取っておかないと、後で取り寄せに手間がかかります。これは必ずやっておいてください。

2週間以内を目安に確認したいこと

  • 年金の手続き
  • 国民健康保険の資格喪失届(14日以内)
  • 世帯主変更届(世帯主が亡くなった場合、14日以内)
  • 郵便物や公共料金の確認

年金については、亡くなった方の状況によって必要な手続きが変わります。日本年金機構にマイナンバーが収録されている場合は、死亡届の提出が原則不要なこともあります。一方、まだ受け取っていない年金(未支給年金)がある場合は別途請求が必要です。詳細は日本年金機構の案内を確認するのが安全です(参考:日本年金機構 受給者が亡くなったとき)。

実家が空き家になる見込みなら、郵便物の転送届も早めに出しておきましょう。郵便物が溜まり続けると防犯上の心配が増えます。

フェーズ2: 相続の手続き(1〜3か月)

葬儀が一段落したら、相続の準備に入ります。ここで大切なのは、感覚で進めず、まず全体像をつかむことです。

相続人を確定する

亡くなった方(法律用語で「被相続人」といいます)の戸籍謄本を、出生から死亡まですべて取り寄せます。これにより法定相続人が確定します。

一見すると相続人が明らかに見えても、前の結婚で子どもがいた、養子縁組をしていたといった事情が後から分かることがあります。ここを飛ばすと、後で大きなやり直しになります。

借金がありそうなら、相続放棄を早めに検討する

相続では、預貯金や不動産だけでなく、借金や未払い金も引き継ぐ可能性があります。借金がありそうな場合は、相続放棄をするかどうかを早めに考える必要があります。

相続放棄は、自分が相続人であることを知った日から3か月以内が原則です(民法第915条)。まだ財産の全体像が分からない場合は、家庭裁判所に申し立てて期間の延長を求めることもできます。焦って結論を出すより、まずは財産と負債の確認を優先した方が安全です(参考:裁判所 相続の放棄の申述)。

遺産の全体像を把握する

不動産、預貯金、有価証券、生命保険(プラス)と、借入金、未払いの税金や公共料金、クレジットカードの未払金(マイナス)をすべてリストアップします。固定資産税の納税通知書、通帳、保険証券、ローン関係の書類などが手がかりになります。

遺産分割協議

相続人が複数いる場合、誰が何を受け取るかを話し合いで決めます。この段階で大事なのは、話し合いが整う前に実家の片付けを進めないことです。遺品や書類を処分してしまうと「勝手に動いた」とトラブルになりやすくなります。

遺言書がある場合は、原則その内容が優先されます。封がされている自筆の遺言書が見つかった場合は、家庭裁判所以外で開封してはいけません(勝手に開封すると5万円以下の過料の対象になります)。なお、法務局に保管された遺言書は検認が不要です(参考:法務省 自筆証書遺言書保管制度)。

相続税の申告が必要な場合は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内が期限です。基礎控除の計算は「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」が基本ですが、相続人の数え方など個別事情で注意点もあります。課税対象かどうか微妙な場合は、早めに税理士に相談することをおすすめします(参考:国税庁 相続税の基礎控除)。

フェーズ3: 実家の片付けと不動産(3〜6か月)

相続の方向性が見えてきたら、実家や不動産のことを考えます。

相続登記は後回しにしない

相続登記とは、亡くなった方の名義になっている不動産を、相続人の名義に変える手続きです。

2024年4月1日から相続登記は義務化されました(不動産登記法第76条の2)。相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請が必要で、正当な理由なく放置すると10万円以下の過料の対象になる可能性があります。制度開始前の相続で登記していない不動産も対象で、原則として2027年3月31日までの対応が必要です(参考:法務省 相続登記の義務化)。

項目自分で手続き司法書士に依頼
費用目安1〜3万円程度(登録免許税+戸籍取得費)6〜10万円程度(報酬込み)
所要期間1〜3か月(不備があると延長)1〜2か月
手間戸籍収集・書類作成をすべて自分で委任すればほぼおまかせ
向いている人不動産が1つ、相続人が少ない不動産が複数、相続人が多い

費用は不動産の評価額や相続人の数によって大きく変わります。あくまで目安として参考にしてください。

実家をどうするか

片付けを始める前に、権利書・通帳・保険証券・契約書類など、相続に関わる書類がないか必ず確認してください。処分してしまうと取り返しがつきません。

実家の扱いは、売却・賃貸・解体のどれが正解かは立地・建物の状態・相続人の意向で変わります。思い出がある家なので感情で決めたくなりますが、維持費や管理の手間も含めて考える必要があります。まずは不動産会社に査定を依頼して、現時点の価値を把握するのが現実的です。

空き家の放置は避けたい

全国の空き家は約900万戸、空き家率は13.8%と過去最高を更新しています(総務省「令和5年住宅・土地統計調査」参考:総務省 住宅・土地統計調査)。

本当に気をつけたいのは、放置による不利益です。管理が不十分な状態が続くと、市区町村から管理不全空家等として勧告を受ける場合があります。勧告を受けると、その敷地は住宅用地特例(固定資産税の軽減措置)の対象外になる可能性があり、税負担が重くなることがあります。「とりあえずそのまま」は、実は一番コストが見えにくい選択です(参考:国土交通省 空き家対策)。

フェーズ4: 墓じまい・供養の整理(半年〜1年)

お墓のことは、亡くなってすぐに決めなければならない場合ばかりではありません。ただ、後回しにしすぎると、家族の中でずっと重たい宿題として残り続けます。気持ちが少し落ち着いた頃に、「今のお墓を今後どうするか」を話し始めるのがおすすめです。

墓じまいを検討する理由として多いのは、お墓が遠くて通いにくい、後継ぎがいない、子どもに負担をかけたくない、管理費を続けるのが難しい、といったことです。

改葬(お骨を別の場所に移すこと)の件数は近年増えており、以前より一般的な選択肢になっています(厚生労働省「衛生行政報告例」)。ただし、手続き以上に大切なのは家族や親族の気持ちを置き去りにしないことです。独断で進めると関係が悪化するリスクがあります。

一般的な流れは、親族での話し合い → お寺や霊園への相談 → 改葬許可の申請 → 遺骨を移す → 墓石の撤去、という順番です。供養先としては永代供養墓・納骨堂・樹木葬などさまざまな選択肢があります。費用だけでなく、通いやすさや家族の気持ちも含めて比較することをおすすめします。

状況によって、優先順位が変わるケース

一般的な流れはここまで説明した通りですが、家庭の状況によって順番を変えた方がよいケースがあります。

親が借金を抱えていた可能性がある場合は、財産の全体像をつかむことを最優先にしてください。相続放棄の期限(3か月)は意外と短く、状況を確認しないまま動くと選択肢が狭まります。

実家がすぐ空き家になる場合は、郵便物の転送と簡単な防犯対策(鍵の確認、雨漏りのチェックなど)を早めに行いましょう。相続登記や売却の判断はあとでも間に合いますが、管理だけは早めに手を打つ方が安心です。

兄弟や親族で話し合いがまとまりにくそうな場合は、実家の片付けを急ぐ必要はありません。遺品整理の前に相続人全員の合意を確認する一言を入れるだけで、後のトラブルを防げることがあります。焦って進めると「勝手に処分した」と受け取られるリスクがあります。

焦って進めると失敗しやすいこと

全体の流れが分かると、つい早く片付けたくなります。でも、急いだために後悔するケースもあります。

  • 遺産分割前に実家の片付けを始める: 相続人間でトラブルになることがあります。貴重品が残っている可能性もあるので、全員の合意を取ってから始めましょう
  • 相続人を確定しないまま銀行口座の解約に行く: 戸籍がすべて揃っていないと手続きできません。二度手間になります
  • 墓じまいを家族に相談せず一人で決める: お墓は感情が強く入る話です。正しさだけで進めると、家族関係が悪くなることがあります
  • 相続放棄を期限に追われて急いで決める: 起算日は「自分が相続人であることを知った日」からです。死亡日からではありません。また、期間延長の申し立ても可能なので、慌てる前に家庭裁判所に相談してください

まとめ: 一つずつ、順番に進めれば大丈夫

親が亡くなったあとの手続きは多岐にわたりますが、全部を一度に片付ける必要はありません。まずは期限があるものから進める。次に、相続人と財産の全体像をつかむ。そのうえで、実家とお墓をどうするかを考える。この順番を意識するだけで、かなり進めやすくなります。

迷ったときは一人で抱え込まず、司法書士・税理士・弁護士・不動産会社など、必要な専門家に早めに相談してください。

当サイトでは、それぞれのテーマを詳しく解説しています。

  • 空き家の管理や売却の考え方が心配な方 → 実家じまい・空き家カテゴリ
  • 相続登記を自分でやるか、専門家に頼むか迷っている方 → 相続登記・名義変更カテゴリ
  • 墓じまいを検討し始めた方 → 墓じまい・供養の整理カテゴリ

気になるテーマから読み進めてください。

よくある質問

Q親が亡くなったあと、最初に何をすべきですか?
Aまずは死亡届の提出(7日以内)を行います。その後、年金の手続き、健康保険の資格喪失届(14日以内)、相続放棄をするかどうかの判断(3か月以内)、相続税の申告(10か月以内)と期限のある手続きを順に進めます。焦らず期限順に対応すれば大丈夫です。
Qすべての手続きにどのくらいの費用がかかりますか?
A相続登記は自分で行えば実費1〜3万円程度、司法書士に依頼すると6〜10万円程度が目安ですが、不動産の数や相続人の状況で大きく変わります。実家の片付けは業者依頼で15〜50万円程度、墓じまいは30〜150万円程度が目安です。いずれも地域・条件によって差が大きいため、まずは見積もりを取って把握するのが現実的です。
Q実家の片付け・相続登記・墓じまいはどの順番がよいですか?
A相続人の確定と遺産の把握 → 相続登記 → 実家の片付けと売却判断 → 墓じまい、という順番が一般的です。ただし、実家が空き家になる場合は郵便物転送や防犯対策を早めに行いましょう。
Q手続きを放置するとどうなりますか?
A相続登記は2024年4月から義務化され、正当な理由なく3年以内に申請しないと10万円以下の過料の対象になる場合があります。空き家を放置すると管理不全空家等として勧告を受け、固定資産税の軽減が受けられなくなる場合があります。相続放棄は3か月を過ぎると原則できなくなり、借金も相続してしまいます。
Q一人っ子でも遺産分割協議は必要ですか?
A相続人が自分一人だけであれば、遺産分割協議は不要です。ただし、相続人が本当に自分だけかを確認するために、被相続人の出生から死亡までの戸籍をすべて取り寄せる作業は必要です。

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的には司法書士・税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。