「亡くなった親の遺品を整理していたら、自筆の遺言書が出てきた。これって開けていいんだろうか」。

封のされた自筆の遺言書を見つけた場合、その場で開封してはいけません。家庭裁判所での「検認」という手続きを経る必要があり、開けてしまうと過料の対象になることもあります。

ただ、検認は遺言の有効性そのものを判断する手続きではなく、すべての遺言書に必要なわけでもありません。法務局保管制度を利用した自筆証書遺言や公正証書遺言は検認不要です。

この記事で分かること。

  • 検認の役割(民法1004条の位置づけ)
  • 検認が必要なケース・不要なケース
  • 必要書類と費用
  • 検認の手続きの流れ(5ステップ)
  • 開封してしまった場合のリスク

遺言書の作成は公正証書遺言の作成手順と費用、遺留分の整理は遺留分とはを参照してください。

結論:検認の手順と必要なケース

遺言書の検認とは、相続人に遺言書の存在を知らせ、遺言書の状態(形状・日付・署名・加除訂正)を裁判所が記録する手続きです。偽造・変造の防止が目的で、遺言の有効・無効を判断するものではありません。

ケース検認の要否
自筆証書遺言(自宅・貸金庫など個人保管)必要
自筆証書遺言(法務局の保管制度を利用)不要
公正証書遺言(公証役場で作成)不要
秘密証書遺言必要

法務局の遺言書保管制度(2020年7月施行)を利用した自筆証書遺言は、保管時に法務局が形式をチェックしているため、検認が省略されます。

検認が必要なケースでは、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てを行います。

検認の役割(民法1004条)

民法1004条第1項は次のように定めています。

「遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。」

「遅滞なく」という表現で、明確な期限は法律で示されていません。一般的には相続開始から 1〜2か月以内に申立てるのが目安とされています。

正直なところ、検認は遺言書の有効性を判断する手続きではありません。形式的に「この日にこの状態だった」と裁判所が確認する手続きです。検認を経た後でも、遺言書の内容に争いがあれば別途裁判で争うことになります。

検認の流れ(5ステップ)

検認手続きは次の5ステップで進みます。全体の所要期間は 1〜2か月程度が目安です。

ステップ1: 申立先を確認

被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てます。被相続人の住所と申立人の住所が異なる場合でも、提出先は被相続人の住所地です。

ステップ2: 必要書類を集める

後述する書類(申立書・戸籍類など)を準備します。集めるのに 2〜4週間かかることが多いです。

ステップ3: 家庭裁判所に申立て

申立書・必要書類・収入印紙・郵便切手を持って家庭裁判所に提出します。郵送でも受け付けてもらえます。

ステップ4: 検認期日の通知

申立てから 1〜2か月後に、家庭裁判所から相続人全員に「検認期日通知書」が送付されます。検認期日は申立人・相続人が立ち会う日です。出席は義務ではなく、欠席しても検認自体は進められます。

ステップ5: 検認当日と検認済証明書

検認期日には、裁判官の前で遺言書を開封し(封がされている場合)、内容を確認します。家庭裁判所が記録を作成し、遺言書に「検認済」の証明が付されます。

検認が済むと、遺言書を相続登記・預貯金解約・株式の名義変更などに使用できるようになります。

必要書類

検認の申立てに必要な書類は次のとおりです。

書類取得先
遺言書(法務局保管制度を利用していない自筆・秘密証書)申立人が保管しているもの。封がある場合は開封せず提出
検認申立書裁判所のサイトでダウンロード、または家庭裁判所窓口
被相続人の出生〜死亡までの戸籍謄本各本籍地の市区町村役場
相続人全員の戸籍謄本相続人本人の本籍地の市区町村役場
受遺者(遺贈の受取人)の戸籍謄本受遺者本人の本籍地(遺言に遺贈が含まれる場合のみ)
収入印紙 800円遺言書1通につき
連絡用郵便切手申立先の家庭裁判所で確認(数千円程度、相続人の人数で変動)

相続人が兄弟姉妹のみの場合や代襲相続が絡む場合は、追加で被相続人の父母・祖父母の戸籍も必要になります。

意外だったのが、遺言書を封がされたまま発見した場合、絶対に開封せずに提出する必要がある点です。封筒の中の遺言書もそのままの状態で提出してください。

費用の内訳

検認にかかる費用の内訳を整理します。

項目金額の目安
収入印紙(遺言書1通あたり)800円
郵便切手1,000〜数千円程度(相続人の人数による)
戸籍謄本の取得費1通 450〜750円、合計 数千円〜1万円程度
検認済証明書1通 150円(収入印紙、必要枚数を申請可)
弁護士・司法書士による申立て代行・書類作成(任意)3万〜10万円程度

実費だけなら 5,000〜2万円程度に収まるのが一般的です。代行を専門家に依頼する場合は別途報酬がかかります。

検認済証明書は、相続登記や預貯金解約で「検認を経た遺言書」であることを示す書類です。複数の機関に提示する見込みがある場合は、提出先の数に応じた枚数を申請しておくと手戻りを防げます。

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開封してしまった場合のリスク

「検認前に遺言書を開けてはいけない」と知らずに開封してしまうケースは少なくありません。

民法1005条では次のように定められています。

「前条の規定により遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、5万円以下の過料に処する。」

つまり、検認前に開封してしまうと 5万円以下の過料の対象になる可能性があります。ただし、この過料は実際に課されるかどうかは家庭裁判所の判断によります。

開封してしまった場合の対処

開封してしまっても、遺言書の効力が失われるわけではありません。次の対応を取りましょう。

  1. 遺言書をそれ以上動かさず、現状を保存する
  2. 家庭裁判所に事情を説明したうえで検認を申し立てる
  3. 申立書または検認期日で開封の経緯を率直に説明する

検認自体は通常通り進められ、その後の相続手続きに進めるケースがほとんどです。意図的な改ざんを疑われないよう、開封したことを隠さずに伝えるのが重要です。

検認後の手続き

検認が完了したら、遺言書を使った相続手続きに進みます。

ステップ1: 検認済証明書の取得

検認当日または後日、家庭裁判所で検認済証明書を申請します。1通150円で必要な枚数を申請できます。

ステップ2: 遺言執行者の選任

遺言書で遺言執行者が指定されていれば、その人が手続きを進めます。指定がない場合や、指定された人が辞退した場合は、家庭裁判所に遺言執行者の選任を申立てるケースがあります。

ステップ3: 相続財産の名義変更

検認済の遺言書と検認済証明書を持って、不動産の相続登記・預貯金の解約・株式の名義変更などを進めます。

ステップ4: 遺留分の確認

遺言の内容によっては、他の相続人の遺留分を侵害している可能性があります。遺留分が侵害されている場合は、遺留分侵害額請求の対象になります(遺留分とは参照)。

よくある質問(FAQ)

検認の期限はありますか?

民法1004条で「遅滞なく」と定められており、明確な日数の期限はありません。一般的には相続開始から 1〜2か月以内に申立てるのが目安です。著しく遅らせると過料の対象になる可能性もあるため、発見したら速やかに動くのが基本です。

検認期日に出席しないとどうなりますか?

申立人以外の相続人の出席は任意で、欠席しても検認は進められます。検認結果は欠席者にも通知されます。ただし、内容に争いを残したくない場合は、なるべく出席して立ち会う方が後のトラブル防止になります。

検認後に遺言書の内容が無効と分かることはありますか?

あります。検認は形式的な手続きで、有効性の判断はしません。日付の欠落、署名・押印の不備、相続人による偽造の疑いなど、内容に問題があれば後から訴訟で無効を主張するケースもあります。

法務局保管制度を使った自筆証書遺言でも、相続人への通知は必要ですか?

法務局保管制度では2つの通知制度があります。1つは、相続人等が遺言書情報証明書の交付を請求すると、他の相続人等にもその事実が知らされる「関係遺言書保管通知」。もう1つは、遺言者が事前に指定した場合に死亡を法務局が把握した時点で送られる「死亡時通知(指定者通知)」です。すべての関係者に自動で広く知らされる仕組みではなく、申請や事前指定がきっかけになる点に注意してください。検認自体はいずれも不要です。

自筆証書遺言を法務局保管制度に切り替えることはできますか?

自筆証書遺言を自宅に保管している方が、後から法務局保管制度に切り替えることは可能です。生前に法務局へ持ち込んで保管申請を行えば、その時点から保管制度の対象になり、相続発生時の検認が不要になります。

まとめ

遺言書の検認は、自筆証書遺言や秘密証書遺言を発見した相続人が、家庭裁判所に申立てる必要のある手続きです(民法1004条)。法務局保管制度を利用した自筆証書遺言や公正証書遺言は検認不要です。

検認の手順は5ステップで、申立てから検認完了まで 1〜2か月程度が目安です。費用の主な内訳は次の通りです。

  • 収入印紙: 遺言書1通あたり 800円
  • 郵便切手: 1,000〜数千円程度
  • 戸籍取得費: 数千円〜1万円程度
  • 検認済証明書: 1通150円

封がされた遺言書を検認前に開封すると、民法1005条の規定で 5万円以下の過料の対象になる可能性があります。発見した場合は開封せずに家庭裁判所へ提出してください。

検認は家庭裁判所での手続きのため、申立て代行・代理は弁護士・司法書士の領域です。判断に迷う場合は、複数の事務所から見積もりとサポート範囲の説明を受けて比較してから依頼先を決めるのも一つの方法です。

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本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法律・税務の個別アドバイスではありません。具体的には司法書士・税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。記載内容は記事公開時点の情報に基づいています。

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