相続した空き家を売りたいと思っても、「まず何をすればいいのか」「査定はどう頼むのか」が分からないまま時間だけが経ってしまう、という方は多くいます。

先に大事な点を言うと、査定や売却相談は相続登記の前でも進められます。ただし、売買契約の締結や引き渡しには名義変更が完了していることが必要です。売却を考えているなら、相続登記は早めに準備しておくと安心です。

この記事では、相続した空き家を売却する際の手順を順番に整理し、査定の頼み方や不動産会社の選び方についても解説します。

空き家を売却する前に確認すること(相続登記の義務化)

不動産の売却は、登記上の名義人だけが行えます。親名義のままでは、子どもが売却の手続きを進めることができません。

2024年4月から相続登記が義務化されています(不動産登記法第76条の2)。不動産を相続したことを知った日から3年以内に名義変更の申請を行う義務があります。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になる場合があります。

名義変更を急かしているわけではありませんが、売却を検討している場合には、相続登記を早めに進めておくことで手続きがスムーズになります。査定を依頼することと並行して動き始めると、時間のロスが少なくなります。

相続登記の詳細な手順については、相続登記はいつまでに何をすればよいかで整理しています。あわせて確認してみてください。

売却の流れ(5ステップ)

空き家の売却は、おおむね次の順番で進みます。

  • ステップ1: 相続登記(名義変更)を済ませる
  • ステップ2: 空き家の状態を確認する(残置物の処分)
  • ステップ3: 不動産会社に査定を依頼する(複数社)
  • ステップ4: 媒介契約を結ぶ
  • ステップ5: 売買契約・引き渡し

ステップ2(残置物の処分)とステップ3(査定依頼)は並行して進めることができます。荷物が残った状態でも査定に対応してくれる不動産会社は多く、早めに相場を把握しておくと「解体してから売るか、そのまま売るか」の判断にも役立ちます。

ステップ3からステップ5までは、物件の状態・立地・買い手の有無によって数か月〜1年以上かかることもあります。売れる時期の見通しを最初から正確に立てることは難しいですが、早く動き始めるほど選択肢が広がります。

実家じまいの全体の流れについては、実家じまいの流れと失敗しやすい点でも詳しく解説しています。

査定の種類と頼み方

机上査定と訪問査定の違い

不動産の査定には「机上査定」と「訪問査定」の2種類があります。

種類内容精度所要時間
机上査定住所・築年数・面積などの情報をもとに算出参考値レベル即日〜数日
訪問査定現地を実際に確認してから算出精度が高い1〜2週間程度

机上査定はオンラインフォームに情報を入力するだけで結果が出るため、まず相場を大まかに把握したいときに便利です。ただし、建物の劣化状況や周辺環境は反映されないため、実際の売却価格と差が出ることがあります。

訪問査定は担当者が現地を訪問して評価を行うため、精度が高く、最終的な売出し価格の根拠として使えます。売却を本格的に考えているのであれば、訪問査定まで依頼することをおすすめします。

複数社に依頼するべき理由

査定は必ず複数の不動産会社(3社程度)に依頼してください。

同じ物件でも、査定額は会社によって数十万円〜数百万円の差が出ることがあります。これは査定担当者の経験や、その会社が得意とするエリアによっても変わるためです。1社だけの査定で判断すると、相場より低い価格で売り出してしまうリスクがあります。

また、査定を依頼したからといって、すぐに売る義務は生じません。「まずは相場を知りたい」という段階での依頼で問題ありません。売るかどうかを今決めなくても、相場が分かると解体・保有・売却という選択肢の比較がしやすくなります。担当者の説明の丁寧さや、根拠の示し方を比べることも、不動産会社選びの参考になります。

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不動産会社の選び方

査定後に媒介契約を結ぶ不動産会社の選び方には、いくつかの確認ポイントがあります。

まず、対象エリアでの売却実績があるかどうかを確認してください。空き家の売却は、地元の取引事情に詳しい会社の方が適切な価格設定と買い手の紹介につながりやすい傾向があります。

次に、査定の根拠を丁寧に説明してくれるかどうかを見てください。査定額の高さだけで選ぶと、後から値下げを繰り返して売れ残るケースがあります。なぜその価格なのかを説明できる担当者かどうかは、重要な判断基準の一つです。

媒介契約の種類(専任媒介・専属専任媒介・一般媒介)によって、活動内容と報告義務が異なります。一般媒介は複数社に依頼できますが、各社の動きが見えにくくなります。専任媒介は1社に限定しますが、活動状況の報告義務があります。どれが合っているかは物件の状況や自分のスタイルによって変わります。不動産会社に違いを説明してもらい、選択するのが現実的です。

売却にかかる費用と税金の目安

売却にかかる主な費用と税金を整理します。

項目目安備考
仲介手数料売却額の3%+6万円(税別)が上限1,000万円の売却で最大36万円程度
印紙税売却額による(数千円〜数万円程度)売買契約書に貼付
登記費用(抵当権抹消等)数万円程度抵当権がある場合
譲渡所得税利益に対してかかる保有期間・取得費による
解体費用(必要な場合)木造30坪で100万〜150万円程度更地で売る場合

譲渡所得税については、一定の要件を満たす場合に「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除」が使えることがあります。昭和56年5月31日以前に建築されたこと、相続直前に被相続人以外が居住していないことなど、要件は細かく定められています。また、相続人が3人以上の場合は控除上限が2,000万円に下がる点にも注意が必要です。適用可否は必ず税理士または税務署に確認してください。

また、更地の状態で1月1日を迎えると、翌年度から住宅用地特例が外れて固定資産税の負担が増える場合があります。解体から売却完了まで時間がかかる見通しの場合は、建物を残したまま売り出す選択肢も検討してみてください。

売りにくい空き家の対処法

空き家によっては、なかなか買い手がつきにくい場合があります。主な理由と対処法を整理します。

立地や築年数の問題で通常の売却が難しい場合は、次の選択肢を検討してみてください。

  • 価格の見直し: 売り出し価格が相場と合っていない場合、適正水準に下げることで買い手が見つかりやすくなります
  • 古家付き土地として売る: 建物の解体を買い手に任せる形で売り出す方法です。更地にする手間と費用が省けます
  • 空き家バンクへの登録: 自治体が運営する空き家バンクに登録することで、移住希望者や再生を希望する買い手にアプローチできます。詳しくは空き家バンクとは?登録の仕方と注意点を参照してください
  • 買取業者への依頼: 不動産会社が直接買い取る形式で、売却に時間をかけたくない場合に向いています。売却価格は市場価格より低くなりますが、早期に売却が確定します

どの方法が適しているかは、物件の状態と立地によって変わります。まずは複数社の査定を受けながら、担当者に「今の状態でどう売るか」を相談してみるのがよいと思います。

空き家の放置にはリスクも伴います。売却を迷っている場合は、実家が空き家になったら最初にやることで選択肢を整理してみてください。

よくある質問(FAQ)

相続登記が終わっていなくても査定を依頼できますか?

査定の依頼は名義変更が終わっていない状態でも可能です。ただし、売買契約を締結するには登記が完了している必要があります。査定と並行して相続登記の手続きを進めておくと、スムーズに売却の段階へ移行できます。

査定を依頼したら必ず売らないといけませんか?

査定の依頼と売却の義務は関係ありません。「まず相場を知りたい」という目的での依頼で問題ありません。査定後に売却しないことを伝えても問題はありません。

荷物が残ったままでも査定してもらえますか?

多くの不動産会社は、残置物がある状態でも査定を行います。荷物の量が多い場合は、事前に担当者に状況を伝えておくと対応がスムーズです。

兄弟が複数いる場合、全員の合意がないと売れませんか?

共有のまま(遺産分割前の状態で)売却するには、相続人全員の同意が必要です。一方、遺産分割協議が成立して特定の相続人が単独取得した場合は、その名義人が売却の主体となります。遺産分割がまとまっていない段階では売買契約を進めることが難しいため、家族間での方針合わせを先に行ってください。

築年数が古い物件でも売れますか?

築年数の古い物件でも、立地や土地の面積・形状によっては売却できるケースは多くあります。建物の状態と土地の評価を含め、まず複数社に査定を依頼して現在の市場評価を確認することをおすすめします。

まとめ

空き家の売却で押さえておくべき点をまとめます。

  • 売却の前提は相続登記の完了。名義変更が終わっていないと売れない
  • 査定は複数社(3社程度)に依頼して比較する
  • 査定を依頼しても、すぐに売る義務はない
  • 費用・税金は物件の状況によって異なる。特に「空き家特例(3,000万円特別控除)」の適用可否は税理士に確認する
  • 売りにくい場合は、価格見直し・古家付き土地・空き家バンク・買取など複数の選択肢がある

まず相場を知ることが、判断の第一歩です。「売るかどうかまだ決めていない」という段階での査定依頼でも問題ありません。

次に読む記事は、今の状況によって変わります。

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本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法律・税務の個別アドバイスではありません。具体的には司法書士・税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。記載内容は記事公開時点の情報に基づいています。

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