「相続税はだいたいいくらかかるのか、ざっくりした金額を知りたい」。
詳しい計算式を理解する前に、まずは概算で見当をつけたい——そういう声をよく聞きます。
相続税は遺産額と家族構成が決まれば、おおよその金額を表で確認できます。配偶者の有無、子の人数で結果が大きく変わるため、自分の家庭に近いケースを見ていくのが現実的です。
この記事で分かること。
- 遺産額別・家族構成別の相続税早見表
- 早見表の正しい使い方(注意点4つ)
- 配偶者税額軽減を加味した「実質負担」
- 二次相続まで考慮した試算の見方
- 早見表に出てこない4つの費用
計算の仕組み自体をきちんと押さえたい方は、先に相続税の基礎控除と計算方法を読むと早見表の数値の意味が分かりやすくなります。
結論:相続税の早見表
最初に結論をお見せします。早見表は「配偶者あり」と「子のみ」の2つの基本パターンで作成しました。
なお、本記事の早見表は次の前提に基づく概算です。具体額は財産構成や特例の適用状況で変わるため、正確な計算は税理士への相談が安全です。
- 配偶者ありの早見表は、配偶者が法定相続分どおりに取得し、配偶者税額軽減をフル適用したケース
- 子のみの早見表は、子が法定相続分どおりに取得したケース
- 小規模宅地等の特例・障害者控除など、その他の特例の適用は加味していない
- 生前贈与の加算や債務控除は反映していない
配偶者ありの場合(配偶者は法定相続分通り取得、配偶者税額軽減フル適用)
| 遺産総額 | 配偶者と子1人 | 配偶者と子2人 | 配偶者と子3人 |
|---|---|---|---|
| 5,000万円 | 40万円 | 10万円 | 申告不要 |
| 7,000万円 | 160万円 | 113万円 | 53万円 |
| 1億円 | 385万円 | 315万円 | 263万円 |
| 1.5億円 | 920万円 | 748万円 | 605万円 |
| 2億円 | 1,670万円 | 1,350万円 | 1,218万円 |
| 3億円 | 3,460万円 | 2,860万円 | 2,540万円 |
| 5億円 | 7,605万円 | 6,555万円 | 5,963万円 |
数値は配偶者税額軽減を適用した後の「子の納税額」の合計です。配偶者の納税額は0円になります。
子のみの場合(配偶者なし、子が法定相続分通り取得)
| 遺産総額 | 子1人 | 子2人 | 子3人 |
|---|---|---|---|
| 5,000万円 | 160万円 | 80万円 | 20万円 |
| 7,000万円 | 480万円 | 320万円 | 220万円 |
| 1億円 | 1,220万円 | 770万円 | 630万円 |
| 1.5億円 | 2,860万円 | 1,840万円 | 1,440万円 |
| 2億円 | 4,860万円 | 3,340万円 | 2,460万円 |
| 3億円 | 9,180万円 | 6,920万円 | 5,460万円 |
| 5億円 | 19,000万円 | 15,210万円 | 12,980万円 |
意外だったのが、配偶者がいるかいないかで税負担が大きく変わる点です。子のみのケースは、配偶者税額軽減が使えないため、同じ遺産額でも 2〜4倍の負担になります。
早見表の正しい使い方(4つの注意点)
早見表は便利ですが、そのまま自分のケースに当てはめると誤解しやすい4つの注意点があります。
注意1: 遺産総額は「課税価格」
ここでいう遺産総額は、相続税の「課税価格」を指します。プラス財産(不動産・現預金・有価証券・生命保険金など)からマイナス債務(借入金・未払金)と葬式費用を差し引いた金額です。
「父名義の家・預金・株式の合計」とは少し違います。
注意2: 早見表は法定相続分通りに取得した前提
早見表は、相続人がそれぞれ法定相続分の割合で遺産を取得した前提で計算しています。実際の取得割合が違うと、各人の納税額も変わります。
ただし、相続税の総額(家族全体の合計)は分け方を変えても基本的に変わらない仕組みです(配偶者税額軽減や2割加算が絡む場合は変動)。
注意3: 配偶者税額軽減は申告が必要
配偶者の税負担が0円になっても、特例適用には申告が必要です(出典: 国税庁 No.4158)。「ゼロだから何もしなくていい」と考えると、後から追徴課税のリスクがあります。
注意4: 不動産は路線価・固定資産税評価額で評価
早見表に当てはめる前に、不動産の評価額をどう算定するかで、課税価格自体が大きく変わります。
- 土地: 路線価方式(路線価×面積×補正率)または倍率方式
- 建物: 固定資産税評価額
時価ではなく路線価で評価するため、市場価格より低くなることが多いですが、自分で正確に算出するのは難しい部分です。
配偶者ありの早見表(解説)
配偶者ありのケースは、配偶者税額軽減(相続税法 第19条の2)が大きく効きます。配偶者が取得した分は、1億6,000万円までまたは法定相続分相当額のいずれか多い金額までは相続税が0円になる仕組みです。
配偶者と子1人の場合
子1人で法定相続分は配偶者1/2、子1/2です。早見表の数値は、相続税総額から「配偶者の取得割合分(1/2)」を差し引いた残りが子の負担になります。
例えば遺産1億円なら相続税総額 770万円。法定相続分通り取得すると配偶者385万円・子385万円ですが、配偶者軽減で配偶者は0円。子の負担は 385万円が早見表の値です。
配偶者と子2人の場合
法定相続分は配偶者1/2、子は1/2を2人で割って各1/4。
遺産1億円なら相続税総額 630万円のうち、配偶者315万円・子各157.5万円。配偶者軽減で配偶者は0円。子合計 315万円が早見表の値です。
配偶者と子3人の場合
子3人だと法定相続分は各1/6。子の人数が多いほど、1人あたりの取得額が下がって税率が下がり、相続税総額自体も低くなる仕組みです。
子のみの早見表(解説)
配偶者がすでに亡くなっている、または離婚済みのケースです。配偶者税額軽減が使えないため、税負担は重くなります。
子1人の場合
子1人が遺産を全額取得します。1人あたりの取得金額が大きくなり、速算表の高い税率が適用されやすくなります。
遺産1億円なら、課税遺産 6,400万円(1億−基礎控除3,600万)×30%−700万円=1,220万円が相続税です。
子2人・3人の場合
子の人数が増えるほど、1人あたりの取得額が下がり、速算表の税率が下がります。遺産1億円・子3人なら 630万円(1人あたり210万円)に対し、子1人だと 1,220万円。
家族構成によって、ほぼ倍の差が出るのが相続税の特徴です。
自分のケースで早見表より細かく試算したい、不動産・生前贈与が絡む、特例の適用余地を確認したい——という場合は、税理士の個別相談が現実的です。複数の事務所の見積もりと提案を比べると、節税の幅も見えやすくなります。
二次相続まで考慮した「実質負担」の見方
早見表は1回の相続(一次相続)の税額を示します。ただし、現実には親が両方亡くなった時点で家族全体の税負担が決まります。これを二次相続まで考慮するのが、実質的な節税の鍵です。
二次相続の落とし穴
配偶者税額軽減を最大限使うと、配偶者が遺産を多く取得することになります。すると次に配偶者が亡くなった二次相続では、配偶者控除が使えず、税負担が重くなりがちです。
試算例: 遺産2億円・配偶者と子2人
| パターン | 一次相続税 | 二次相続税(配偶者死亡時、子2人で按分) | 合計 |
|---|---|---|---|
| 配偶者が全額取得(1.6億まで軽減フル活用) | 540万円 | 3,340万円(遺産2億がそのまま二次相続) | 3,880万円 |
| 配偶者が法定相続分(1/2)取得 | 1,350万円 | 770万円(残った1億円) | 2,120万円 |
| 配偶者が3,000万円のみ取得 | 約2,295万円 | 0円(基礎控除以下) | 約2,295万円 |
数値はおおまかな試算ですが、ご覧のとおり「配偶者が全額取得」より「適度に子に分配」した方が一次・二次合計の税負担は軽くなる傾向があります。
正直なところ、相続税の節税は配偶者の生活費・住居の問題と絡んで複雑になります。机上の節税で配偶者の生活が苦しくなっては本末転倒です。配偶者の生活基盤を確保した上での節税設計が現実的になります。
早見表に出てこない4つの費用
相続税の早見表は「相続税の納税額」を示しますが、相続には他にも費用が発生します。
費用1: 登録免許税(不動産の名義変更)
不動産の相続登記には登録免許税が必要です。固定資産税評価額の 0.4% が原則です(出典: 登録免許税法 別表第一)。
例: 不動産評価額 3,000万円なら登録免許税 12万円。
費用2: 税理士報酬
相続税の申告を税理士に依頼する場合、遺産総額の 0.5〜1.0% 程度が一つの目安として案内されることが多いです(最低 30万〜50万円程度)。税理士報酬は自由報酬で、地域・財産内容(非上場株式・複数不動産など)・加算事項によって幅があるため、複数の見積もり比較が現実的です。
例:遺産1億円なら 50万〜100万円程度が一つの目安。
費用3: 葬式費用は相続税の計算上は控除可能
葬式費用(通夜・葬儀の費用、火葬料、お布施など)は、相続税の課税価格から差し引けます。香典返しや法要費用は対象外です(出典: 国税庁 No.4129)。
差し引ける費用を整理しておくと、課税価格自体が下がります。
費用4: 延納の利子税
相続税を一括で払えない場合、最長20年の延納制度があります。利子税の年率は、相続財産に占める不動産等の割合や延納特例基準割合などにより区分ごとに変動するため、具体的な税率は税理士または税務署で最新情報を確認してください。延納と通常納税で総額にどの程度の差が出るか、事前の試算が現実的です。
よくある質問(FAQ)
早見表は誰の試算で作られていますか?
国税庁の相続税速算表(No.4155)と相続税法の計算ルールに基づき、自前で検算した数値です。遺産総額・法定相続人・法定相続分通りの取得という前提で計算しています。実際のケースでは特例適用や不動産評価で結果が変わるため、正確な金額は税理士の試算が確実です。
早見表より自分の家のケースで詳しく試算するにはどうすればよいですか?
国税庁の「相続税の申告要否判定コーナー」または税理士のシミュレーションツールが利用できます。複数の財産・特例・生前贈与が絡む場合は、税理士事務所での無料相談を活用するのが現実的です。
早見表に出ていない遺産額の場合、どう計算すればよいですか?
相続税の基礎控除と計算方法に4ステップの計算手順を整理しています。基礎控除を引き、法定相続分で按分し、速算表で税率を当てはめれば、自分のケースの試算ができます。
配偶者が法定相続分通り取得しなかった場合は、表の数値からどう変わりますか?
相続税の総額(家族全体の合計)は法定相続分通りに計算するため、分け方を変えても総額は基本的に同じです。ただし、各相続人の納税額は実際の取得割合で按分し直すため、子の納税額は表の数値と変わります。
孫養子の場合の早見表は使えますか?
使えますが、注意点があります。孫養子は基礎控除の人数に含められる一方、相続税が 2割加算(出典: 国税庁 No.4157)の対象です。早見表の数値より2割増しになる部分があるため、孫養子を含む場合は税理士の試算が安全です。
まとめ
相続税の早見表は、遺産額と家族構成からおおよその税額を確認するための一覧です。
配偶者ありの場合は配偶者税額軽減で税負担が大きく抑えられ、子のみの場合は配偶者軽減が使えないため、同じ遺産額でも2〜4倍の負担になります。
早見表を使うときは、次の4点に注意してください。
- 遺産額は「課税価格」(プラス財産−債務−葬式費用)
- 法定相続分通りの取得を前提とした数値
- 配偶者税額軽減は申告が必要
- 不動産は路線価・固定資産税評価額で評価
そして、一次相続だけで判断せず、二次相続まで含めた合計負担で考えるのが現実的な節税です。一般論として「配偶者が全額取得」より「適度に子に分配」が合計負担で有利になりやすい傾向はありますが、配偶者の生活費、配偶者自身の固有財産、その後の財産変動で結論が変わるため、税理士による個別シミュレーションが安全です。
早見表の数値を超える、または特例適用が複雑な場合は、税理士の試算が確実です。判断に迷う場合は、複数の税理士事務所に無料相談を依頼して、見積もりと節税提案を比べてから依頼先を決めるのも一つの方法です。
次に読む記事は、状況に応じて選んでください。
- 計算の仕組みを理解したい方 → 相続税の基礎控除と計算方法
- 生命保険金の課税を整理したい方 → 生命保険金の受け取りと税金
- 遺産分割協議書を作成する方 → 遺産分割協議書の書き方
- 相続登記の全体像 → 相続登記とは?2024年義務化後にやるべきことの全体像
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