「お墓を維持する人がいなくなる」「遠方でお参りに行けない」「子どもに負担をかけたくない」。
こうした理由から墓じまいを検討する方が増えています。ただ、いざ動き始めようとすると、何から手をつければいいのか分からず、止まってしまう方も多いです。
墓じまいは単にお墓を撤去するだけではなく、遺骨の移動先を決めたり、役所の手続きをしたりと、複数のステップを順番に進めていく必要があります。
この記事では、墓じまいの全体の流れと各ステップの進め方をまとめました。
墓じまいの全体の流れ(6ステップ)
大きく分けて6つのステップで進みます。
- 家族・親族との話し合い
- 新しい供養先を決める
- お寺(墓地管理者)に連絡する
- 改葬許可の申請(役所の手続き)
- 閉眼供養と遺骨の取り出し
- 墓石の撤去と区画の返還
この順番に沿って進めるのが基本です。特に「1. 家族への相談」と「3. お寺への連絡」を後回しにすると、感情的なもめごとに発展しやすいです。
ステップ1:家族・親族との合意形成
墓じまいで最も大切なのは、家族や親族の理解を得ることです。お墓は個人の持ち物ではなく、家族の共有の場として大切にされてきたものです。
事前に相談せずに進めてしまうと、「勝手にご先祖様のお墓をなくした」と親族間のトラブルになるケースがあります。
話し合いで共有しておきたいことは3つです。
- なぜ墓じまいを考えているか(管理が難しい、後継者がいないなど)
- 遺骨をどこに移すか
- 費用をどう分担するか
ステップ2:新しい供養先を決める
遺骨の移動先を先に決めないと、改葬許可の申請ができません。新しい供養先から「受入証明書」を発行してもらう必要があるためです。
供養先の選択肢には、永代供養墓・納骨堂・樹木葬・合祀墓・手元供養などがあります。費用と特徴の概要を下の表で確認してください。
| 種類 | 費用の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 合祀墓 | 5万〜30万円程度 | 他の方の遺骨と合わせて納める。費用が最も抑えられる |
| 樹木葬 | 10万〜100万円程度 | 自然の中に眠るイメージ。近年人気が高まっている |
| 納骨堂 | 20万〜150万円程度 | 屋内施設。都市部に多く、アクセスがよい |
| 個別墓(永代供養付き) | 50万〜200万円程度 | 個別の墓石あり。一定期間後に合祀に移行するものが多い |
「永代供養」と名のつく施設でも、一定期間後に合祀(他の方と一緒に納める形)に移行するところが多いです。契約前に供養の期間と合祀のタイミングを確認しておきましょう。
ステップ3:お寺・墓地の管理者への連絡
お寺の境内墓地の場合は、住職に墓じまいの意向を伝えます。公営墓地や民営霊園の場合は、管理事務所に連絡します。
お寺への連絡は、感謝の気持ちを伝えながら、今後の管理が難しいことを正直に話すのがよいでしょう。ここでの対応が、のちの離檀料の話し合いにも影響します。
離檀料(離壇する際にお寺に渡すお布施)については、法的な支払い義務はありません。お気持ちとしてお渡しするものです。詳しくは別記事でまとめています。
ステップ4:改葬許可の申請
遺骨を移すには、現在のお墓がある市区町村の役所で「改葬許可証」を取得する必要があります(墓地埋葬法)。
申請に必要な書類は主に3つです。
- 改葬許可申請書: 現在の墓地がある市区町村の役所で入手します
- 受入証明書: 新しい供養先から発行してもらう書類
- 埋葬証明書: 現在の墓地の管理者(お寺や霊園)が発行する書類
自治体によって書式や必要書類が異なることがあるため、事前に役所に確認してください。
ステップ5:閉眼供養と遺骨の取り出し
改葬許可証を取得したら、お墓から遺骨を取り出します。
仏教のお墓では、遺骨を取り出す前に「閉眼供養(魂抜き)」を行うのが一般的です。住職にお願いして読経してもらいます。お布施の目安は1万〜5万円程度ですが、地域やお寺によって異なります。
遺骨の取り出しと墓石の撤去は、石材店に依頼します。
ステップ6:墓石の撤去と区画の返還
遺骨を取り出した後、石材店が墓石を撤去して更地に戻します。区画を管理者に返還して、墓じまいは完了です。
墓石の撤去費用は、墓地の広さや立地によって変わりますが、1平方メートルあたり10万〜15万円程度が目安です。お寺の境内墓地の場合、指定の石材店があることもあるため、事前に確認してください。
費用全体の目安
墓じまいにかかる主な費用をまとめます。
| 項目 | 費用の目安 |
|---|---|
| 墓石の撤去・処分 | 10万〜30万円程度 |
| 閉眼供養のお布施 | 1万〜5万円程度 |
| 離檀料(お寺の場合) | 3万〜20万円程度が多い |
| 改葬許可手数料 | 数百円〜数千円程度 |
| 新しい供養先(合祀墓) | 5万〜30万円程度 |
| 新しい供養先(個別・納骨堂など) | 50万〜200万円程度 |
総額は30万〜300万円程度が目安です。幅が大きいのは、新しい供養先の選び方によって金額が大きく変わるためです。
まとめ:まず家族で話し合うことから
墓じまいは複数のステップがありますが、最初の一歩は家族との話し合いです。
全員が同じ方向を向いていれば、その後の手続きはスムーズに進みます。「なぜ墓じまいを考えているか」「どこに移すか」を家族に伝えるところから始めてみてください。
離檀料の相場やトラブルへの対処法については、次の記事でまとめています。
よくある質問
- Q墓じまいにはどのくらいの期間がかかりますか?
- A一般的には2か月から半年程度かかります。お寺との話し合いや役所の手続き、石材店の手配などが必要なため、余裕をもって進めることをおすすめします。
- Q墓じまいの費用はどのくらいかかりますか?
- A総額で30万〜300万円程度が目安です。墓石の撤去費用(10万〜30万円程度)、閉眼供養のお布施(1万〜5万円程度)、離檀料(3万〜20万円程度が多い)、新しい供養先への費用(5万〜200万円程度)などが含まれます。新しい供養先の種類によって大きく変わります。
- Q遠方に住んでいても墓じまいはできますか?
- Aできます。石材店やお寺とのやり取りは電話・メール・郵送でも対応可能です。改葬許可申請を郵送で受け付けている自治体もあります。ただし、閉眼供養と遺骨の取り出しの際には現地に行く必要があるケースが多いです。
- Q家族の反対があっても墓じまいはできますか?
- Aお墓の名義人(祭祀承継者)が手続きを進める立場にありますが、家族全員の合意を得ないまま進めると後から大きなトラブルになることがあります。特に年配の親族が強い思い入れを持っている場合は、時間をかけて丁寧に話し合うことが大切です。
- Q改葬許可証はどこで取得しますか?
- A現在のお墓がある市区町村の役所(環境課・保健センターなど)で申請します。必要書類は「改葬許可申請書」「新しい供養先からの受入証明書」「現在の墓地管理者からの埋葬証明書」の3つが基本です。書式は自治体によって異なるため、事前に役所に確認してください。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的には司法書士・税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。
